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技術雑誌編集部発!モノづくり羅針盤
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第1回 オーダーメードのモノづくりで安心感を届ける〜ミナロ
工場内の作業風景
工場内の作業風景
   さまざまなレジャー施設で賑わう横浜ベイサイド。シーサイドライン沿線に整然と区画整理された殺風景な土地がある。ここ金沢区福浦の市大医学部駅前には横浜市立大学付属病院の真っ白の病棟がそびえたち、そこから街路樹に沿って5分ほど歩くと、広大な埋立地に建設された箱状の建物が延々と続く。横浜市が造成した金沢横浜産業団地である。
   その一角に新たなモノづくりのあり方を模索している製造業「ミナロ」(緑川賢司社長)の工場がある。木型・モデル加工・検査治具などの製作を得意とする同社は、かつて勤務していた木型会社をリストラされた3人の若い技術者たちが、なけなしの貯金を持ち寄り02年に立ち上げた会社だ。
現場改善の4S活動にも取り組む
現場改善の4S活動にも取り組む
   設立当初の取引先は3社だけ。はじめは給料を払うことさえできなかったが、今では100社近くの取引先を抱え、毎月のように新規の取引先が増えている。創業からわずか4年目の06年には早くも自社工場を購入した。新聞やテレビなどメディアへの露出も増え、地元ではちょっとした有名企業といえなくもない。緑川社長は次のように語る。
   「町工場の技術屋は『他社と交流するとノウハウが流出する』などと言いながら狭い世界に引きこもるところが少なくなく、その挙句に追い詰められていきました。私たちは口コミやブログを最大限に活用して自分たちの得意な技術について積極的に情報発信してきました。何が必要とされていて、自分たちには何ができるのか、まずは問いかけてみなければわからないでしょう」。
加工性に優れ、環境にやさしい人工木材「ケミカルウッド」の販売も手がける
加工性に優れ、環境にやさしい
人工木材「ケミカルウッド」の販売も手がける
   しかし、いまでも社員は社長を含めて5人だけ。知名度は上がってもいたずらに規模の拡大は追わない方針だ。
   分業もしない。社員全員がCADを使ったモデリングからマシニングセンターによる加工、塗装に至るまで何でも手がける。大手の工場ではセル生産が大流行だが、ミナロではその先を行っているのだ。もちろん、受注生産ゆえに可能なのだが、理由はそれだけではない。
   「私たちはそれほど意識しているわけではないのですが、顧客からは『仕事がていねいで安心できる。いつも品質が安定している』といった評価をいただいています。生産者の顔写真と氏名が表示されている有機野菜がウケているのと似ているのかもしれません」(緑川社長)。
   とはいえ、自分たちだけではできないことも当然ある。だから横のつながりも大切にしている。05年には金沢産業団地発のモノづくりのコミュニティーサイト「技者(わざもの)王国」を団地の企業4社と立ち上げた。手弁当での運営だが、ご近所付き合いが深まる中、同じ工業団地に集う仲間たちが持つ設備や技術を知ることができるようになるなど、メリットは少なくない。仕事以外でも機械のアイデアを競い合うテレビ番組にチームを結成して出場して結束を強めてきた。今後は共同受注ができるようなつながりをめざすという。
   かつての町工場が持っていた強みを、ミナロは新興の工業団地で甦らせようとしているのかもしれない。そしてその力をオープンに発信しようとしている。モノづくりのネットワークを張り巡らす「技者」たちの静かな挑戦が始まった。

雑誌「工場管理」編集長・久保敏也